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部活動は学校教育の中で行われるべきか|なおきの市政ラボ vol:93

中学校の部活動を学校から切り離し、地域のクラブへ移す。いわゆる「地域移行」の議論が全国で加速しています。

本日、大分大学教育学部の谷口勇一教授をお招きし、超党派の議員勉強会を開催しました。大分市議会だけでなく、他市の議員にも声をかけた会です。

谷口教授はスポーツ社会学の専門家で、ご自身も野球や陸上を経験された方です。部活動は日本が長い歴史をかけて築いたスポーツ文化であり、学校教育をより充実させる存在だという立場を明確に示されました。

お子様を持つ多くのご家庭に関係のある話だと思いますので、長文ですが最後までお付き合いください。

部活動に参加する生徒ほど生活満足度が高い

大分県が5年ごとに実施する「大分県民スポーツ実態調査」の2025年版。その中学生データを見ると、運動部活動に参加している生徒は、参加していない生徒に比べて生活満足度が明らかに高い結果が出ています。

「いきいきと生きている」と実感する度合いも顕著です。部活動は課外活動という位置づけですが、そこで獲得した自信は日々の授業への意欲にもつながります。

学校生活全体を底上げする力が部活動にはある。これは、一つの事実として認識すべきでしょう。

部活動を学校から切り離す発想には無理がある

スポーツ庁は当初、部活動を学校から完全に切り離す「地域移行」を打ち出しました。しかし、文部科学省からの強い反発を受けて、現在は地域と共に創る形式である「地域展開」へ表現を改めています。

ところが多くの学校現場では、この表現の変化が正しく伝わっていません。地域展開を地域移行と同じ意味で捉えている方がまだ多い。

大分県内には総合型地域スポーツクラブが30以上存在します。しかし全国約1500クラブを対象にした調査で、半数近くが「部活動の受け皿にはなれない」と回答しました。

大分市内のモデル事業でも深刻な課題が明らかになっています。平日は教員、休日はクラブスタッフが指導を分担した結果、生徒がどちらの指示に従うべきか混乱する事態が起きました。

選抜権を持つ顧問教員に生徒は逆らえません。かといって、専門指導を行うクラブスタッフの指示も無視できません。結果、生徒が板挟みになり、精神的な負担を抱えることになります。

学校の枠組みを残したまま、地域の人的資源をサポートとして取り入れる。それが地域展開のあるべき姿だと谷口教授は提唱します。

当事者の声は学校での存続を望んでいる

中学生を対象にしたアンケート調査で、完全な地域移行を望む声は6.3%でした。保護者でも10.8%に過ぎません。教育学部の学生22名への調査では、12名が学校での活動を存続を望みました。

しかし、問題はここからです。

中学校教員の51.0%が地域移行を支持しています。子どもたちの声と教員の意識が大きくずれているのです。

教員の中でも温度差があります。体育以外の教科を担当する教員は6割以上が移行を望んでいます。体育教員でも40代以上は学校存続を支持し、30代以下はワークライフバランスを重視する傾向がある。

制度を変えるのであれば、まず当事者の声に耳を傾けるべきではないでしょうか。

イギリスの失敗を日本は繰り返してはならない

社会学者ジョージ・リッツァが提唱した「マクドナルド化」という概念があります。効率性を追求するあまり、本来大切にすべきものが失われていく現象です。日本の教育現場にも、同じ力学が働いている可能性があります。教員が無償で生徒に向き合う中から生まれる信頼関係。その価値は効率の数字では測れません。

イギリスは1990年代にスポーツ指導を全面的に民間へ委託しました。その結果、競技力は低下し、学校は荒れました。非行率も劇的に増加しました。

危機感を持ったイギリスは方針を転換し、日本の部活動を参考に教員への特別手当を整備して学校スポーツを再建しています。その成果は数字にも表れました。国全体のスポーツ供給力が向上しました。生徒のスポーツ実施率も大幅に伸びました。学校の雰囲気が改善し、いじめ、不登校、非行の件数が劇的に減少しました。

いま日本が進めようとしている脱学校化は、イギリスが既に失敗して引き返した道です。吹奏楽部をはじめとする文化部も同様です。専門家を学校に招き、学校の枠組みの中で活動を続けていく発想が求められているのかもしれません。

地域移行の先行事例が突きつける現実

地域移行を試みた先行地域からは、深刻な報告が上がっています。

大分市のある地域では、休日のクラブ活動中に事故が発生しました。その責任がクラブ側に押し付けられ、関係性が悪化して元の学校部活動に戻っています。外部指導者の参入によって、教員が生徒との関係性で存在感を失う問題も起きています。教員としての誇りが傷つけられるという声です。

保護者にとって最も切実なのは費用負担の問題でしょう。月額500円だった部費が、外部への謝金により月額2000円に跳ね上がるケースが報告されています。義務教育で保障されるべき活動に対し、これだけの負担増を求めるのが適切なのか。保護者からは公金で賄うべきだという強い不満も出ています。

大阪市では首長主導で民間委託を進めましたが、費用の不公平感から保護者の猛反発を受けて大きな揺り戻しが起きました。都市か地方かを問わず、生徒も保護者も求めているのは学校の中での部活動存続なのかもしれません。

全国唯一、学校存続を選んだ熊本市の決断

全国の自治体が地域移行に傾く中、熊本市は部活動を学校に残すと表明しました。全国で唯一の事例として紹介します。

2027年度からは、部活の指導を希望する教職員のみが担当します。指導にあたる教員には適切な報酬が支払われます。財源は受益者負担としつつ、支払いが困難な家庭にはPTAが周囲に分からない形で支援します。地元企業からの寄付、卒業生からの支援、クラウドファンディングも活用する予定です。

部活動を外へ出すのではなく、教員自身が職業の意味を見つめ直す機会としつつ、地域全体で子どもを支える。この熊本市の仕組みから学べる部分は多くあると感じます。

大分市の実情に合った独自のモデルを築く

国の方針は揺れ続けています。文部科学省は学習指導要領の中で部活動を教育的な営みと位置づけ、すべての子どものスポーツ権を保障する土台と捉えています。

一方で、2015年に新設されたスポーツ庁は、オリンピックなどのエリート育成の観点から民間委託を推進する姿勢です。この省庁間のせめぎ合いは、全国自治体の現場に混乱をもたらしています。

大分県内でも温度差があります。大分県は地域移行を早期に進めたい意向を示していますが、現場を抱える大分市は「地域展開」という言葉を使い、慎重な姿勢を見せています。

谷口教授は、国のブレは今後も続くと見通した上で、各自治体が地域の実情に合った独自のモデルを構築し、ボトムアップで国に提示していくことが重要だと指摘されました。

子どもたちが安心して活動できる環境を守ることは、私たちの責務です。国の動向に振り回されるのではなく、大分市の実情に合った地域展開のあり方を、しっかりと追求してまいります。

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