しかし実態は逆です。
全会一致というルールは、むしろ最大会派の独走を防ぐために設けられた仕組みです。ただし、この制度にはもう一つの顔があります。
今回は、全会一致のルールが持つ二面性を解説します。
1. 意見書提出見送りまでの経緯
2026年6月25日付の大分合同新聞は、議会運営委員会(以下、議運)において、自民党が賛成せず全会一致の条件を満たせなかったことが要因であるように報じています。
一方、大分県議会では同様の趣旨の意見書が多数決により可決される見込みです。同じ地域の議会でありながら、結果はまったく異なります。
地方自治法上、議会の運営方法は各議会の自律的な判断に委ねられているため、こうした制度上の差異が生じます。
2. 意見書という仕組み
意見書とは、地方議会から国(政府や国会)に提出する公式な要望書です。地方だけの力では解決できない課題について、国の法改正や予算措置を求めるために送ります。
地方自治法でこの権利が認められており、住民の声を国へ届ける公的なルートとして機能しています。
ただし、議員個人が勝手に出せるものではありません。議会の中で所定の賛成を得て初めて、その自治体の議会全体の意思として提出されます。この「所定の賛成」を得るルールこそが、今回の焦点です。
3. 最大会派の独走を防ぐ仕組み
大分市議会の定員は44名。議運に参加するには、所属議員が4名以上の会派である必要があります。この議運で全会一致が得られた意見書だけが本会議に上程されます。
ここで重要なのは、議運に参加する会派は、所属議員の人数に関係なく、すべて対等な「1票の拒否権」を持ちます。最大会派である自民党がどれだけ多くの議員を擁していても、他の会派が1つでも反対すれば意見書は提出できません。
つまり全会一致ルールは、最大会派が数の力で押し切ることを構造的に封じる仕組みです。多数決であれば最大会派の意向がそのまま通る場面でも、全会一致であれば少数会派の声を無視できません。参加会派の間では、極めて公平なルールとして機能しています。
4. 議運に入れない少数会派の死角
しかし、この制度にはもう一つの側面があります。所属議員が1名から3名の少数会派は、議運に代表を送ることができません。意見書の提出可否を決める協議の場に、最初から加わる資格がないのです。
全会一致方式は本来、少数意見を尊重する仕組みとして設計されています。しかし大分市議会の現実では、議運に参加できない少数会派の意見は、合意形成のテーブルにそもそも載りません。
- 議運に参加できる会派は、人数に関わらず対等な拒否権を持つ
- 議運に参加できない少数会派は、賛成も反対も表明する場がない
対等な1票を行使できる場に、着席すら許されない会派が存在する。これが現在の大分市議会です。
5. 制度が内包する公平性の二面性
この構造を整理すると、全会一致には明確な二面性が浮かび上がります。
会派を単位として見れば、議運に参加する会派同士は人数に関わらず対等です。最大会派の横暴を防ぎ、丁寧な話し合いを促す。これは制度の「光」の部分です。
しかし個々の議員を単位として見れば、4名未満の会派に所属する議員は、意見書の決定プロセスから制度的に排除されています。これは制度の「影」の部分です。
この4名以上という要件にも合理的な理由はあります。仮にすべての1人会派に議運への参加権を認めれば、わずか1人の反対で44名の議会全体が完全に停止します。効率的な運営を維持するために一定の基準は必要です。しかし、その基準が少数会派の意見を奪っている事実は残ります。
6. 柔軟なルール運用への模索
全国の先進的な自治体では、こうした二面性を乗り越えるための工夫が始まっています。
- テーマ別の使い分け:防災やインフラなど地域課題は全会一致で議会の総意を示し、国政テーマは多数決で決着をつける
- 特別多数決の導入:4分の3以上の賛成で可決とし、1会派だけの反対による完全停止を防ぐ
- 陳情に対する例外措置:市民からの陳情が委員会で採択された場合は、例外的に本会議への上程を認める
全会一致は、最大会派の独走を防ぐ優れた仕組みです。しかし同時に、そこに参加できない少数会派をどう包摂するかという課題も抱えています。どちらか一方の側面だけを見て制度を語ることはできません。
この二面性を正しく理解した上で、テーマに応じた柔軟なルールを模索していくことが、今後の地方議会に求められる姿勢ではないでしょうか。





