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旧香川県立体育館の解体問題 – 歴史的建築物がなぜ壊されるのか

世界的建築家である丹下健三氏が設計し、通称、船の体育館として親しまれてきた旧香川県立体育館。歴史的かつ文化的に高い価値を持つこの建造物が現在、解体の危機に瀕しています。

2014年の閉館以降、存廃について議論されてきましたが、香川県(以下、県)は解体方針を決定し、約8億4700万円で解体工事請負契約が県議会において可決されました。

この解体を巡っては、行政と反対派の間で全く異なる主張が交錯しています。予めお断りしておくと、私自身は現場の当事者ではなく、すべての真実を知っているわけではありません。

しかし、双方の主張や客観的な事実関係を追っていくと、この問題は単なる建物の取り壊しにとどまらず、地方議会の在り方や政治の関わり方を問い直す重要なケースであることに気づかされます。

本投稿では、公開情報(香川県議会議事録や議員の発言等)に基づいて、私なりに調査した結果をお伝えします。個人の見解が含まれますことをご了承ください。

県が主張する安全性

県が解体を主張する最大の理由は安全性の確保です。2012年の耐震診断の結果、地震時に倒壊する危険性があり、もし倒壊すれば隣接する緊急輸送道路を塞いでしまう通行障害建築物に該当することが要因です。

県は過去に3回、耐震改修工事の入札を行いましたが、屋根と下部構造を一体で工事する難易度の高さからすべて不調に終わりました。その後の民間公募でも、県の費用負担なしで持続可能な提案がなかったため、やむを得ず解体を決断しました。

そして今、民間グループの再生案に対して県の掲げる安全確保の大前提と相容れないとして協議を拒否しています。議決という民主的な手続きを経ている以上、方針を覆す考えはないようです。

税金ゼロで再生を掲げる専門家

一方、解体に反対する再生委員会や一部の県議会議員からは、県の主張を根本から覆す指摘がされています。

まず倒壊のリスクについて、日本トップクラスの建築構造の専門家や東大名誉教授が、現在の技術で計算すれば直ちに倒壊する危険性はないと明確に否定しています。当初の調査を行った丹下事務所でさえも、建物は壊れないと見解を訂正しているのです。

さらに、解体に巨額の税金を投入するのではなく、民間資金を活用して耐震補強を行い、ホテル等の施設として再生させるという、税金ゼロの現実的な提案も出されています。

文化庁が近現代建築の保存に向けた支援を検討している中、そのモデルケースになり得るチャンスを県自ら逃しているという批判も上がっています。

消えた5億円と不自然な入札

事態を複雑にしているのが、巨額の税金が絡む不透明なプロセスです。

裁判所の措置によって、別の業者が3.5億円で解体できると見積もりしていた事実が判明しています。それにもか関わらず、なぜ8.5億円という価格で落札されたのか。この差額の約5億円が一体どこへ消えるのか、県民から強い疑念が持たれています。

同時期に香川県の土木工事を巡って多数の業者が談合で摘発されている背景もあり、今回の解体工事もあらかじめ特定の業者に落札させることが決まっていたのではないかと噂されています。

技術評価0点の解体業者選定

疑惑は落札金額だけではありません。解体工事を落札した業者についても、議会で問題が指摘されました。

技術提案評価において、コンクリートの転倒、落下防止対策や文化財の保存調査中の安全性確保といった最も重要な項目の点数が0点でした。

難易度が高いとされているはずの工事をこのような技術水準の業者に任せて、本当に安全が確保できるのか問われています。

知事はこれに対し、加算点が少ないだけで技術力不足ではないと擁護していますが、不安を払拭するには至っていません。

大物議員への忖度

行政の決定に疑念が生じた際、本来であればブレーキをかけ、真相を究明するのが議会の役割です。しかし、それは十分に機能していないようです。

植田議員によると、議会では、大物議員の指示で動かざるを得ない、逆らえば報復されるというような恐怖や同調圧力が蔓延しているようです。

世論調査では7割以上の県民が立ち止まって協議すべきと答えているにもかかわらず、県議会議員の約8割がアンケートに無回答を貫き、沈黙を守っています。

一部の議員が疑問点を突きつけ反対討論を行ったものの、結果的に議案は可決され、解体が強行されようとしています。

この問題の本質と教訓

繰り返しますが、私はこの騒動の裏側をすべてを知っているわけではありません。県として、やむを得ない事情があるのかもしれません。

しかし、巨額の税金の使い道が不透明なまま決定され、住民の疑問の声が議会に届かず、十分な議論もないまま物事が進んでいくことに疑問を感じます。

これは決して香川県だけの話ではありません。私たちが政治に関心を持たず、選挙に行かず、行政や議会の監視を怠れば、どの地域でも起こり得ることです。

誰を議員として選ぶかによって、私たちの税金の使い道が決まり、今後の地域の景色が変わります。

皆さんが少しでも政治に興味を持って頂けるよう、これからも発信を続けて参ります。

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