福岡市でタバコに関する条例が改正され、過料の上限が2万円となりました。
一方、大分市で実際に徴収されている金額は2千円。この数字だけを見れば、福岡市のほうが厳しいと感じるかもしれません。
市民の方から「大分市も福岡市のように過料を2万円に引き上げてはどうか」というご意見をいただいたことをきっかけに、両市の条例と運用を調査しました。この記事では、そこから見えてきた3つの違いを整理します。
1. 条例上限額と実際の徴収額
まず押さえておきたいのは、条例に書かれた過料の上限額と、違反者が実際に支払う金額は別物であるという点です。
「大分市ポイ捨て等の防止に関する条例」では、強化区域内の違反者に対して1万円以下の過料と定めています。しかし、同条例の施行規則では、実際の徴収額を一律2,000円と規定しています。これは制定当時、他都市の状況を参考にしながら、マナーを守ってもらうための妥当な金額として設定された背景があります。
では福岡市はどうか。
福岡市の条例では2万円以下の過料と定められています。金額だけ見れば大分市の2倍です。ところが、福岡市議会事務局に確認したところ、実際の過料額を定めていないことが分かりました。
つまり、条例で定められた上限と現実的に運用されている金額、両者は異なる構造になっています。残念ながら、ニュースを見るだけでは正確に把握することはできません。
2. 福岡市における路上喫煙の規制強化
福岡市が実施した条例改正の本質は、じつは過料の金額変更ではありません。禁止される行為の範囲が拡大されたことにあります。
改正前のルールでは、路上禁煙地区内であっても、禁止されていたのは「道路上で歩行中または自転車に乗車中の喫煙」に限られていました。極端な話、立ち止まっていれば違反にはならなかったわけです。
改正後は、歩いているかどうかにかかわらず、禁止区域内における喫煙行為そのものが一律に禁止されました。立ち止まっての喫煙、公園のベンチに座っての喫煙、すべて処罰の対象です。
じつは大分市では、強化区域内の公共の場所における喫煙は、以前から一律に禁止されています。今回の改正によって、福岡市の規制の枠組みが大分市の方式にようやく追いついたという見方もできます。
なお、この改正条例の施行期日は規則で定める日とされており、具体的な運用開始に向けた調査や市民の合意形成はこれからの段階と推測されます。
3. 大分市の過料処分実績
大分市は、平成19年から過料の取り締まりを行っています。この統計を見ると、罰則が現場でどのように機能しているかが理解できます。
直近の令和7年は、条例違反件数が668件に対して、過料が適用されたのはわずか5件。過去の推移を見ても、違反件数に対して過料が科される割合は5%あるかないか。
この数字は、過料を乱発している訳ではなく、最終手段に位置づけていることを示しています。
ポイ捨て防止等指導員が現場で丁寧に指導を行い、その場で喫煙をやめたり吸い殻を回収したりすれば過料としない。度重なる指導に従わない悪質なケースにのみ、最終手段として過料を科す。そうした運用が行われていることが、このデータから読み取れます。
4. 罰則の実効性を高める体制づくり
今回の調査に伴い両市を比較したことで、新たな視点が見えてきました。
福岡市のように条例で2万円という高い上限額を設けていても、運用体制が整っていなければ過料の実績はゼロのままです。一方、大分市は罰則の運用規則を定めており、以下のような仕組みが確立されています。
- 指導員が現場で違反者に直接注意し、弁明の機会を与えるプロセスが確立されている
- まずは指導でマナーを守らせ、悪質な場合にのみ過料を科すという段階的な運用が徹底されている
- 長年のデータを蓄積し、運用の妥当性を検証し続けている
福岡市は、今回の条例改正で禁止行為の範囲を大分市と同等の水準に引き上げました。次の焦点は、この拡大された規制に対してどのような運用体制を構築していくか。大分市も新たな規制を設ける場合は、条例と規則の関係、他都市の事例などを参考にすると思われます。
※本記事の内容は、大分市の条例と施行規則、福岡市の改正条例並びに福岡市議会事務局への調査に基づいています。





