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なおきの大分市政ラボ Vol:82 佐賀関の漁師を増やしたい

佐賀関の漁業が抱える人の問題

先日、林業水産課との打ち合わせを行いました。テーマは佐賀関における新規漁業就労者の支援制度について。
結論から言えば、制度そのものは存在しているのに、それを十分に機能させられていない構造的な問題が浮き彫りになりました。

研修から独立までの3年間

大分市には漁業新規就業者育成支援事業や青年就業給付金といった補助制度があります。漁師を志す人は、まず指導者(親方)の下で1年間の研修を受け、その後2年間の実践型研修を経て独立する。これが基本的なルートです。

現場は非常に厳しく、休みもないほどハードな修行が待っています。しかし、その厳しい選考と修行を乗り越えた人の定着率は極めて高い。過去にこの制度を活用した12名のうち、辞めたのはやむを得ない事情の2名のみ。制度の設計そのものは機能しています。

受け入れ枠は年間1名

問題はここからです。国の予算の都合で、現在この制度の受け入れ枠が(実質)年間1名に絞られています。漁師になりたい人がいて、育てられる親方がいて、受け入れたい漁協がある。それなのに国の枠が1名しかないために、入り口が極端に狭い。これが最大のボトルネックです。

問題はどこにあるのか

大きな金額ではないのに使えない構造

有効活用している国の補助金ですが、1名分であれば、実は大きな金額ではありません。にもかかわらず、あくまで国の制度の枠組みに沿って動いているため、市が独自に枠を広げるという発想にはなっていません。枠を増やしたいなら漁協から国へ直接要望を上げるのが筋だ、というのが市のスタンスです。

これが問題だと思ってます。需要はある。予算は大きくない。しかし、国と市の役割分担という名の縦割り構造が、現場のニーズに蓋をしている。

指導者(親方)問題

もう一つの構造的な問題があります。研修の受け入れを拡大しようにも、指導者の確保が難しい。厳しくも丁寧に面倒を見てくれる良質な指導者を量的に確保するのは簡単ではありません。優秀な親方を担保できなければ、枠だけ増やしても定着率は下がる。ここは冷静に見なければなりません。

移住政策として漁業振興を捉え直す

定着率83%が示すもの

実際にこの制度を使って佐賀関にやってくる人の多くは、関西圏など県外からの単身移住者です。この漁業支援制度は、結果として移住政策としても機能しています。

しかも定着率は約83%。県外から来た人が佐賀関に根を下ろし、漁師として生計を立て、地域の担い手になっている。このデータが示す意味を、もっと正面から評価すべきです。

市独自の支援枠は投資かバラマキか

私は市に対し、国の枠が足りないなら大分市独自の支援スキームを設けるべきではないかと問いかけました。県外から人を呼び込み定住してもらうことは、将来の税収増を考えても投資効果の高い移住政策です。

これに対して、市は慎重な姿勢を示しました。部署の目的はあくまで水産業の振興であり、移住を主目的とした市独自の枠組み創設は、国との役割分担や税金投入に対する市民の理解を得るのが難しいと。

気持ちは分かります。しかし水産振興と移住政策を別々の箱に入れて考えること自体が縦割りの発想です。一人の漁師が移住して定着すれば、それは水産振興であり、人口対策であり、地域コミュニティの維持でもある。政策の効果を一つの部署の枠内だけで測ること自体に限界があります。

定住の最大の壁は住まい

汲み取り式トイレと空き家のミスマッチ

移住者にとって最大の壁は住まいです。佐賀関エリアには空き家が多く存在しますが、汲み取り式トイレが主流で、地形的に浄化槽を設置するスペースもない物件が大半です。都会から移住を志す若者にとって、この住環境は大きなハードルになっています。

空き家の数だけ見れば十分にある。しかし質が追いついていない。ここにもミスマッチという構造的な問題があります。

市営住宅と民間社宅の活用提案

現在、一部の古い市営住宅を漁協関係者に配慮して貸し出していますが、先日の大規模火災の影響もあり満室状態です。

そこで私からは二つの提案をしました。一つは、研修生が来るたびに慌てるのではなく、市営住宅を3戸程度は確保しておくこと。もう一つは、JX金属精錬さんが保有する空き社宅を漁協向けに借り上げられないか、実態調査と連携を進めることです。制度の入り口を広げても、住む場所がなければ人は来られません。

佐賀関支店の企業型漁協という強み

個人事業主型と組織型の違い

大分市内の漁協でも、支店によって事業形態は大きく異なります。大分支店など他の支店では、漁師一人ひとりが個人事業主として独立し、各自で魚を市場に持ち込む形態が主流です。

一方、佐賀関支店は漁協が漁師から魚を買い取り、市場の需給を見極めて出荷をコントロールする。いわば企業のような形態をとっています。だからこそ組織の従業員を増やすような感覚で、新規就労者の受け入れに積極的になれる。この企業的なアプローチが佐賀関ブランドを支えています。

ふるさと納税に頼らない理由

以前、佐賀関漁協の支店長からも同様の話を聞きましたが、漁獲量には波があります。急な需要増に対応できず欠品すれば、ブランドの信用問題に直結する。だからこそ、ふるさと納税の品目拡大には慎重な姿勢をとっている。目先の売上より長期的な信用を守る合理的な経営判断です。

加えて、漁業資源全体が減少傾向にある中、国は作り育てる漁業へのシフトを進めています。一本釣りのような自然相手の漁法で人を増やすことと資源量の関係をどう見るか。中長期的なデータ分析に基づいた議論が必要です。

この政策の投資効率を数字で見る

制度を使った12名中、10名が定着。定着率は約83%。他の移住支援策と比べても極めて高い水準です。県外から一人の漁師が移住し定住すれば、住民税、消費活動、地域の担い手としての貢献が数十年にわたって続きます。

一方で、この制度の受け入れ枠は年間わずか1名。市には予算の余裕がある。問題はお金ではなく仕組みです。

国の制度に乗るだけではなく、市として独自に枠を設け、住環境の整備と組み合わせれば、この投資効率の高い移住定住パッケージを拡充できる。水産振興という枠を超えて、大分市全体の人口戦略として位置づけ直すべきテーマです。

引き続き、関係各課との協議を重ね、具体的な制度設計の提案を進めてまいります。

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