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空き家住宅26戸を子育て支援に活かす提案

大分市が管理する集合住宅に、募集をしても埋まらない空室が26戸あります。中堅所得者向けの特定公共賃貸住宅「ベルビュ賀来」です。

入居率は驚きの51.9%

市から提供を受けた公式データが示すこの数字を、私は明らかな異常値だと受け止めています。原因は家賃の硬直化にあり、解決には規則の見直しが必要です。この記事では、住宅課との協議を通じて見えてきた課題と、子育て世帯の支援につなげる具体策をお伝えします。

1. 入居率51.9%という異常な数字

特定公共賃貸住宅とは、中堅所得者向けに市が管理する賃貸住宅です。低所得世帯向けの一般的な市営住宅とは対象となる所得層が異なり、大分市には4住宅あります。

そのひとつ「ベルビュ賀来」について、市から提供を受けた令和8年4月1日現在の数字が次のとおりです。

  • 管理戸数 54戸
  • 入居戸数 28戸
  • 空き戸数 26戸
  • 入居率 51.9%

ここで重要なのが、26戸のうち政策空き戸がゼロだという点です。政策空き戸とは、建て替えなどのために市が意図的に募集を止めている住戸を指します。それがゼロということは、26戸すべてが募集をしているのに埋まらなかった住戸だという意味になります。一時的な現象という説明は成り立ちません。

2. 空室26戸が生む年間1700万円の損失

空室は、そのまま市の収入の逸失につながります。規則で定められた家賃は月額6万円です。26戸が1年間空いたままなら、単純計算で年間1872万円になります。所得に応じた減額を踏まえ、最も保守的に見積もっても、年間およそ1685万円を毎年失い続けている計算です。

一方で、住戸のリフォーム費用は1件あたり128万円という実績があります。26戸すべてを改修すると3328万円ですが、空室が埋まれば2年ほどで回収できます。民間の賃貸経営であれば即座に判断が下る水準ではないでしょうか。

行政の住宅管理に投資回収という発想が制度上組み込まれていないことが、この状況を生んでいると考えています。

3. 30年間変わらない家賃

ベルビュ賀来の家賃は、規則の別表で月額6万円と定められ、平成9年度以降は実質的に見直されていません。建物は平成6年度の建設で、築30年を超えました。4DKでエレベーター付きですが、給湯は電気温水器、排水は浄化槽です。市場での競争力は決して高くありません。

さらに、入居者の負担は家賃だけではありません。減額適用後の家賃54,000円に、駐車場使用料3,000円と共益費4,000円が加わり、月6万1000円になります。入居できる収入の下限は月収15万8000円ですから、その層にとって軽い負担ではありません。

入居率51.9%という結果自体が、価格と市場の実態が合っていないことを示していると考えます。

4. 空室のしわ寄せを受ける既存入居者

空室の長期化は、現に住んでいる方にも不利益をもたらしています。

条例では、エレベーターや給水施設などの使用にかかる費用は入居者の負担と定められています。共用部分の維持費は戸数で割る仕組みのため、空室が増えるほど、残った入居者一人あたりの負担が重くなります。共益費の徴収も入居者から選ばれた管理人が担い、草刈りなどの管理も入居者側の負担です。

空室を埋めるのは市の管理責任です。そのコストの一部が入居者に転嫁されている状態は、看過できないと考えています。

5. 制度が認める家賃の柔軟性

住宅課との協議では、家賃は法令に基づいて算定されているという説明を受けました。この点を確認するため、条例と規則、根拠となる省令の条文を一つずつ読み込みました。

結論から申し上げると、家賃を決めているのは市自身です。

根拠法には二つのルートがあります。民間のオーナーが建てるものと、自治体が自ら建設・管理するものです。大分市は後者にあたります。国の省令が定めているのは家賃の上限を算出する方法であり、下限を縛る規定はどこにもありません。大分市の条例も、算出した額の範囲内において規則で定めるとしています。

つまり6万円は、法令が指定した金額ではなく市が選んだ数字ということになります。

6. 規則だけが縛る住戸ごとの価格設定

では、なぜ家賃が動かないのか。原因は規則にあります。

省令には、各戸の床面積や位置による利便性を考慮して住戸ごとに家賃を増減できる規定があり、大分市の条例もこれを引用しています。

ところが、規則に一律6万円と書き込んでいるため、この柔軟性が使えません。現行のままでは、次のいずれもできない状態です。

  • 空室が長期化している住戸だけ家賃を下げる
  • 改修した住戸の家賃を上げて投資を回収する
  • 子育て世帯向けの住戸に政策的な家賃を設定する

執行部が慎重になる理由も理解しています。金額が一つしかないため、下げれば既存の入居者にも連動してしまうからです。ただしこれは、6万円を上限として市長が別に定める額という書き方に改めれば解消します。上限を据え置いたまま、新たに募集する住戸だけ金額を設定できるようになります。

7. 子育て世帯に開く所得要件の緩和

もう一つ、規則が塞いでいる道があります。入居できる所得の下限です。

大分市の規則は月15万8千円以上を条件としています。しかし省令には、それに満たない所得の方でも、所得の上昇が見込まれる場合は自治体の長が基準を定めれば入居できるという規定があります。国との協議は要件になっていません。所得は現時点で高くないものの、これから伸びていく世帯。まさに若い子育て世帯が当てはまります。

先行事例もあります。いずれも公営住宅での取り組みで、特定公共賃貸住宅とは根拠となる制度が異なりますが、空き住戸を若い世代に振り向けた発想として参考になります。

群馬県太田市では、入居率が最も低かった団地で35歳未満かつ婚姻1年以内の世帯を所得に関係なく入居可能とし、家賃も近隣相場より2万円以上安く設定しました。長野県では、県営住宅の子育て世帯向けリノベーションに国の交付金を活用しています。

単純な値下げではなく子育て支援を掲げることには、もう一つ利点があります。家賃を一律に下げれば周辺の民間賃貸と価格競争になりかねませんが、対象を絞れば民間が対応しきれていない層への政策的な供給という整理ができます。

8. 小さく始めるモデル改修の提案

以上を踏まえ、三つの提案をまとめます。

一つ目は、規則の別表を上限方式に改めることです。 6万円を上限として、住戸の状態に応じた金額を設定できるようにします。既存の入居者には経過措置を置き、影響が及ばない設計にします。

二つ目は、所得要件の下限を緩和することです。 省令の規定に基づき、所得の上昇が見込まれる子育て世帯が入居できる基準を市が定めます。

三つ目は、まず3戸から改修を始めることです。 費用はおよそ384万円。この3戸が埋まれば年間194万円から216万円の増収となり、2年以内に回収できます。効果を検証したうえで次の判断につなげる進め方であれば、財政面の説得力も持てるはずです。

規制の見直しだけでは、建物が古いままで入居にはつながりません。改修投資だけでは、家賃が固定されたままで回収できません。両輪がそろって初めて機能します

そして、いずれも規則の改正で実現できます。議会の議決も国との協議も必要ありません。市の判断で着手できる範囲にあります。

空室26戸という数字を、市民一人ひとりが安心して暮らせる資源に変えられないか。この問題提起を、議会の場で丁寧に重ねていきます。

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