大分駅の東側に広がる約1万8,000㎡の公有地22街区と54街区。令和8年3月の建設常任委員会で、この土地の利活用に関する12団体からの民間アイデア提案の結果が報告されました。
今回はその中から、最大規模の開発プランである提案A「OITA CROSS GREENS」を取り上げ、施設の中身、財政スキーム、そしてリスクまで掘り下げます。
1. 巨大複合施設が描く風景
提案Aの総延床面積は約12万7,400㎡。12団体の中でも突出した開発規模です。敷地を3つのゾーンに分割し、それぞれに明確な役割を持たせています。
- 22街区(約5.2万㎡, 17階建):1階にバスターミナル、2,3階に商業施設、4,5階に駐車場、7〜17階にホテル
- 54-1街区(約4.3万㎡, 10階建):1,2階に商業施設、3,4階に駐車場、6,7階にテレビ局、8〜10階に学校
- 54-2街区(約3.2万㎡, 29階建):分譲タワーマンション
大分駅から東へ向かって、ホテル、文化施設、居住機能が段階的に並ぶ構成です。駅前の人の流れを東側へ自然に引き込む意図が読み取れます。
2. ホテル・テレビ局・学校を1棟に詰め込む縦の都市計画
注目すべきは54-1街区の構成です。低層に商業、中層にテレビ局のスタジオ、高層に学校という、異質な機能を1つの建物に縦に積み上げる計画になっています。
提案資料では、広島テレビやマールク新さっぽろが参考事例として挙げられていました。地方局のスタジオ移転と教育機関の誘致を同時に実現し、若い世代が日常的に出入りするにぎわいの核をつくる狙いです。
22街区のホテルについても、資料にはヒルトン大阪城が参考として示されており、ハイクラス帯の誘致を想定していることが分かります。
大分駅前にこの規模のホテルが立てば、宿泊需要の取り込みだけでなく、隣接するJRおおいたシティとの相乗効果も期待できます。
3. 市の歳出を抑える等価交換
提案Aの財政スキームの柱は等価交換方式です。簡単に言えば、大分市が土地を提供し、建設費を抑えながらビルを建て、完成後に土地と建物の価値に応じて所有権を分け合う仕組みです。
市にとっての最大の利点は、バスターミナルの整備に多額の借金を組まずに済む点です。
通常、これだけの規模の交通施設を市が単独で建設すれば、数十億円規模の歳出が必要になります。等価交換であれば、その負担を大幅に圧縮できます。
加えて、民間施設(ホテル、マンション、商業施設)が建つことで、固定資産税と都市計画税という恒久的な税収が市に入るようになります。
低未利用地のまま寝かせておくよりも、財政上のメリットは明確です。
4. タワマンの採算を左右する建設費高騰の壁
ただし、この提案には無視できないリスクがあります。それは建設資材と人件費の高騰です。
国土交通省の建設工事費デフレーターによれば、建設コストはここ数年で急激に上昇しています。
鉄筋コンクリート造の建設単価は、2020年比で約1.5倍に跳ね上がりました。この環境下で29階建てのタワーマンションを建て、なおかつ採算を取るには、分譲価格をかなり高く設定せざるを得ません。
大分市の不動産市場で、駅前とはいえ周辺価格帯を上回る高付加価値マンションにどれだけの需要があるか。
需要が見込めなければ、デベロッパーは公募そのものに応じない可能性もあります。
5. 土地が戻らないリスクをどう考えるか
等価交換方式には、もうひとつ見落としてはならない論点があります。
土地の所有権の一部が、永久に民間へ移転するという点です。
特に54-2街区のタワーマンション部分は、完成後に個々の購入者が土地の持分を所有します。
50年後、100年後に建物が老朽化しても、大分市の判断だけでは建て替えも更地化もできません。区分所有者全体の合意形成が必要になります。
一方、他の提案で採用されている定期借地方式(長期に渡り土地を貸し付け、期間満了後に更地で返還させる方式)であれば、土地は確実に市の手元に戻ります。
ただし、その場合、バスターミナル等の公共施設の建設費を市が負担する可能性は高くなります。
歳出の圧縮を取るか、将来の土地の自由度を取るか。ここは二者択一のトレードオフであり、議会としても慎重に判断すべき部分です。
6. この提案のまとめ
提案Aは、開発規模や事業スキーム、参考事例のいずれを見ても完成度が高いですが、あえて指摘するなら以下がポイントです。
- バスターミナルの最低仕様:等価交換の交渉過程で、公共床(バスターミナル)の面積や設備グレードが削られないよう、最低基準を事前に定めること
- 建設費変動への備え:着工までに資材価格がさらに上昇した場合、追加負担がどちらに発生するか契約上の取り決めを明確にすること
- 土地の不可逆性の説明責任:マンション用地として民間に譲渡した土地が将来戻らない事実を、市民に対して丁寧に説明し、納得を得ること
大分市は、令和8年度中に利活用方針が決定する予定です。引き続き、情報発信とチェックを続けて参ります。
出典:大分市「22街区・54街区の利活用に向けた民間アイデアを新たに募集します!」(大分市公式サイト)




