昨年11月の佐賀関大規模火災から9か月あまり、大分市が復興計画の素案を公表しました。
この記事では、先日行われた議員向け説明会の資料を元に、被災された方の暮らしがどこまで戻ったのか、まちを今後どう作り替えていくのか整理します。
1. 復興計画とは何を決めるものか
今回公表されたのは「復興計画(案)」で、位置づけとしては復興マスタープランにあたります。
計画は二段構えです。まず、めざす姿と大きな方針を示すのが今回の復興計画。そのうえで、具体的な事業名・実施主体・スケジュールを定める「実行計画」を2027年3月末までに別に作ります。
実行計画に基づく復興事業の期間は、2027年度から2031年度までの5か年です。
キャッチフレーズは、被災した住民から寄せられた言葉をもとに、「復興から未来へ つながりあふれる佐賀関」と定められました。
2. いまの被災者の暮らし
今回の火災で焼失した建物は196棟、焼失範囲は約6.39ヘクタールにのぼります。
8月17日時点で、94世帯131人の方が仮の住まいで生活を続けています。
罹災証明書は109件発行され、うち全壊が94件を占めます。
健康面の支援も続いています。保健師などによる巡回訪問が行われ、訪問と電話で体調や生活の変化、熱中症への注意を確認しています。
説明会の資料によれば、被災が原因の急激な体調悪化や、新たに支援が必要になった方はなく、個別対応が必要な方は既に既存の医療・介護サービスにつながっているとのことでした。
一方で、慣れない集合住宅での騒音や生活の勝手の違いが不安要因になっている方もいると報告されています。ここは今後も丁寧に見ていく必要があると感じました。
3. 住まいの再建はどこまで進んだか
被災された方が元の場所で暮らしを立て直すには、まず焼け跡の解体が要ります。
市が費用を負担する公費解体は、対象172棟のうち169棟が申請済みです。8月20日時点で108棟の撤去が終わり、進捗率は約63.2%。市道田中線沿いの区域はすでに撤去を終えています。残る区域も10月末の完了を目指しています。
住まいの確保では、復興市営住宅の建設事業者が決まりました。落札したのは梅林建設を代表とする共同企業体で、落札金額は9億2610万円(消費税を除く)です。
計画では、この復興市営住宅を34戸・3階建てとし、集会室とエレベーターを備える予定です。場所は津波のリスクを避けてテニスコート跡地に置き、地域の交流拠点となる田中運動公園に隣接させます。事業期間は契約締結から令和9年12月17日までです。
4. 計画がめざす復興の姿
復興計画は、被災地だけでなく佐賀関地域全体の活力を取り戻すことを狙っています。
被災地区は、もともと人口が減り続けてきた地域です。2005年に608人だった総人口は、2025年には269人まで減りました。住民の約7割が高齢者という状況です。
火災の前から、幅4メートル未満の狭い道路が大部分を占め、建築基準法が定める接道義務を満たさない敷地が数多くありました。建て替えが難しく、老朽化した木造住宅と空き家が密集していた。この構造が延焼を広げた一因でもあります。
計画では、復興の理念として「復興」「安全・安心なくらし」「交流を育む」「未来への継承」「地域の伝統をつなぐ」の5つの言葉を掲げ、そこから3つの視点を立てています。
■ 生活再建の推進:自立再建の支援と復興市営住宅の整備で、恒久的な住まいを早く確保する
■ 災害に強いまち:火災に加え、津波や土砂災害への対応力を高める
■ 住み続けられる・訪れたくなるまち:居住環境を整え、伝統文化と観光で地域外との交流を広げる
5. まちをどう作り替えるか
計画エリアは約11ヘクタールで、被災地区に田中運動公園の周辺を加えた範囲です。この中を4つのゾーンに分けます。
■ 交流広場ゾーン:田中運動公園のグラウンドを住民や来訪者が集まる場に
■ 居住ゾーン:自立再建を希望する世帯の宅地
■ 複合交流ゾーン:来訪者が訪れやすい海側に置き、地区の玄関口とする
■ 安全・安心まちなみ形成ゾーン:既存の住宅地で、まちなみを活かしながら防災対策を進める
道路では、高台への避難路となる市道田中線を主要防災道路として拡幅します。道路延長は約300メートル、幅は約9メートルの計画です。
空き家対策も柱の一つです。今回の火災では、管理が不十分な空き家が延焼の一因になった一方、過去に建物が除却された跡地の空き地が焼け止まりに寄与した箇所も確認されました。市は防災力を高めるため、空き家の除却を進めるとしています。
6. 災害に強いまちにするために
被災地の周りには、別の災害リスクも重なっています。
土砂災害警戒区域と特別警戒区域が山側に広く指定され、大雨のときの土石流や斜面崩壊が住宅地に直接影響する地形です。南海トラフの巨大地震を想定した津波浸水では、佐賀関漁港や港湾施設の沿岸部で浸水深が最大10メートル近くに達し、浸水想定区域は被災地区の住宅地全域に及びます。
復興計画では、こうした災害への備えと切り離して進めることはできません。復興市営住宅を高台寄りに置く判断も、居住ゾーンを北側に配置する考え方も、この前提から来ています。
上水道の更新による耐震性の向上や、県道635号線(佐賀関循環線)での避難経路と物資輸送ルートの確保も、計画に盛り込まれています。
7. 素案に意見を伝えるには
市はこれまで、被災された方への個別意向調査を3回、地元との意見交換会を複数回重ねてきました。直近では8月23日に復興意見交換会が開かれ、大勢の方が参加しています。
今回公表されたのはあくまで素案であり、今後、市民からの意見を踏まえて計画として固め、2027年3月末までに実行計画へとつなげていきます。
復興計画の全文は、市のホームページに公開されています。是非ご一読いただき、気付いた点があれば市へ声を届けてほしいと思います。





