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なおきの「思考の深掘り」vol.1 人は何故、正しさで分断するのか

SNSを中心にして、立場の異なる人同士が、相手を理解しようとせずに衝突している場面を頻繁に見かけます。
この現象について、WEBメディア ReHacQで興味深い議論が展開されていました。
南山大学准教授で行動経済学・進化心理学を専門とする小林佳世子氏は、現代社会の分断を「価値観の違い」や「説明不足」としてではなく、人間の脳に組み込まれた進化的な仕組みから説明していました。
特に印象的だったのは、「人は悪い相手を罰するとき、脳が快感を感じることがある」という指摘です。
通常、人は他人が苦しむ姿を見ると不快感を覚えます。しかし、相手を「社会にとって悪い存在だ」と認定した瞬間、脳の反応が切り替わり、共感が弱まり、代わりに処罰行為そのものが報酬として処理される場合があるというのです。
かつて人間は、およそ150人前後の小さな集団で生き延びてきました。その環境では、集団のルールを破る者や危険をもたらす存在を厳しく排除することが、集団全体の生存率を高める合理的な行動でした。そのため、「悪を罰する行為」を後押しする脳の仕組みが形成されたと考えられています。
問題は、この仕組みが現代社会でもそのまま作動してしまう点です。顔も背景も分からない相手に対して、正義の名のもとに言葉を投げつけるとき、私たちは議論をしているつもりでも、実際には「正しさによる快感」を得る行為に近づいてしまう。その結果、対話は成立せず、分断だけが強化されていきます。
もう一つ、小林氏が強調していたのが 「非人間化」 という概念。自分と大きく異なる立場や属性を持つ相手を、脳が「一人の人間」として処理しなくなる現象です。相手を理解できない存在ではなく、排除すべき対象として認識した瞬間、共感のブレーキが外れるようです。
では、分断を越える方法はあるのでしょうか。
一つの例に示されていたのは、対面で会うこと、同じ体験を共有することです。音楽や笑い、共同作業といった、理屈を超えた共通体験を通じて、相手を再び「人間として認識できる状態」に戻すこと。そのための環境を先に整えることが重要だとされていました。
この議論を通じて感じたのは、分断は誰かの性格や善悪の問題ではなく、人間の正義感と恐怖が、現代の環境とアンマッチしている結果なのではないか、ということです。

出典:
WEBメディア ReHacQ
南山大学准教授 行動経済学者 小林佳世子 氏

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