経済学って聞くと、なんだか難しそうですよね。GDP、インフレ、金融政策などなど。
ニュースでは毎日のように耳にするけれど、じゃあ経済学って結局なんの学問なの?と聞かれると、意外と答えに詰まりませんか。
実は私もそうでした。。
でも先日、東京大学大学院の小島武仁教授がネット番組:ReHacQで語っていた解説がすごく分かりやすく、納得感が半端なかったです。
「中学生にもわかるように」というコンセプトで組まれた対談です。その内容をかみ砕いてお伝えします。
経済学の出発点はアダム・スミスの「見えざる手」
経済学の起源は、18世紀後半のイギリスにさかのぼります。アダム・スミスが書いた「国富論」。
ここが近代経済学のスタート地点だと言われています。
スミスが唱えたのは、こういう話です。
市場でみんなが自由に売り買いをすれば、誰かが上から指示を出さなくても、モノやサービスの配分は自然とうまくいく。
まるで見えない手が働いているかのように。
これが「見えざる手」ですね。
そもそも私たちは、欲しいものを無限にもらえる世界には住んでいません。
限られた資源を、どう分け合えばみんなが少しでも幸せに暮らせるか。
経済学の根っこにあるのは、実はこのシンプルな問いです。
当時のヨーロッパでは、金や銀をとにかく貯め込むことが国の豊かさだと信じられていました。
貿易に制限をかけて、とにかくお金を国内に集める。
スミスはこれに異を唱えます。
金銀を金庫に入れておいても、使わなければただの金属でしょ、と。
それよりも市場に任せて資源を回した方が、社会全体が豊かになる。
この発想が経済学を生み出す契機になりました。
効率性の本当の意味は、改善の余地がないこと
効率がいいと聞くと、GDPが伸びることを思い浮かべませんか?
実は経済学者の言う効率性って、ちょっと意味が違います。
誰も損させずに、もっと良くなれる余地がまだあるなら、その状態は効率が悪い。
逆に、誰かを良くしようとすれば必ず別の誰かが割を食う段階まで来ていれば、それが効率的。
パレート効率性と呼ばれる考え方です。
対談で出ていた例がわかりやすかったです。
お米好きの人とビール好きの人がいて、両方に同じ量のお米とビールを配ったとします。
当然、お互い微妙に不満が残りますよね。
お米好きにお米を多めに、ビール好きにビールを多めに配り直せば、どちらも得をする。
この「配り直せばもっと良くなるのに放置されている状態」が非効率ということです。
ここで大事なポイントがあります。
何が嬉しいかは、本人の心の中にしかわからない。だからこそ市場が必要になる。
一人ひとりが自分の判断で売り買いに参加することで、見えないはずの好みの情報が社会に伝わっていく。
市場メカニズムの強みは、まさにここにあります。
公平性の正解は誰にも決められない
効率性はまだ整理しやすい。厄介なのは公平性の方です。
何をもって公平とするか、人によって答えがまるで違うから。
有名な対立があります。
ベンサムの功利主義は、社会全体の幸福度を足し合わせて、その合計が最大になるのが望ましいという考え方。
対してジョン・ロールズは、社会で一番恵まれていない人の幸せをまず底上げすべきだと主張しました。
どちらが正しいのでしょうか。
興味深いのは、多くの経済学者は、何が公平かの判断そのものには踏み込まず、もしこの基準を公平だとみんなが合意するなら、こういう仕組みを作れますよと提案する。
何とも巧妙なやり方ですよね笑
保育園の入園調整に経済学が使われている
マッチング理論というものがあります。
これは市場の力が働きにくい分野で、限られた枠をうまく配分するための仕組みを設計する研究です。
身近な例が保育園の入園調整でした。
人気園に希望が集中すると、親御さんの中に「ここは倍率高いから書くのをやめておこう」と駆け引きを始める人が出てくる。
この読み合いが、かえって不公平を生んでしまうわけです。
マッチング理論を活用すれば、第1希望から正直に書いてもらうだけでいい。
正直に出すのが一番得になるよう、数学的に仕組みが設計されているからです。
また、ある自治体で調査したところ、兄弟2人を同じ保育園に入れたい世帯の入園率が、1人だけの世帯より明らかに低かった。
送り迎えの現実を考えれば同じ園に通わせたいのは当然ですよね。
でも仕組みがそれに対応できていなかった。
この事実を突き止めて、兄弟世帯の優先点数を引き上げる調整を提案し、改善につなげたそうです。
市場の失敗を防ぐ仕組みとしてのオークション
もちろん、市場がいつもうまく機能するわけではありません。
対談で取り上げられていたのが、携帯電話の電波周波数帯をどう配分するんだ問題。
以前は、事業計画書を出してもらって政府が審査するか、くじ引きで決めるかでした。
でも計画書方式だと、どの事業者もバラ色のことを書いてくる。
本当に有効活用できる会社を見分けられない。
そこで1990年代から広がったのが電波オークションです。
実力のあるA社は高い金額を提示できる。大したことができないB社はそこまで出せない。
いくら払えるかが、その事業者の実力を映し出すシグナルになる。
キレイごとではなく、お金という裏付けで判断できるようにしたわけです。
この発想は補助金にも応用できると教授は指摘します。
ただ渡すのではなく、自力で集めた資金に応じて同額を上乗せするマッチング寄付の仕組み。
自分たちでお金を集められるプロジェクトは、それだけ社会に求められている証拠でもある。
限られた公的資金の使い道として、理にかなった方法ではないでしょうか。
経済学は数式だらけの難解な学問、というイメージを持っている方は少なくないと思います。
でも根っこにあるのは、限りある資源をどう分ければみんなが少しでも幸せに暮らせるか、という身近な問い。
保育園の入園調整から電波の配分まで、私たちの暮らしのすぐそばで経済学が活かされているというお話でした。





