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「食」が地方を豊かにする。世界の富裕層が日本のローカルを目指す理由

「美味しいものが食べたいから、日本に行きたい」

世界中の旅行者を対象にした調査で、訪日理由のトップに挙がるのが「食」だという事実をご存知でしょうか。

しかも近年、世界の富裕層が目指しているのは東京や京都の三つ星レストランではなく、車でしか行けないような日本の「地方」なのです。

ビジネス動画メディア「ReHacQ」で、日本ガストロノミー協会会長の柏原孝太郎さんとの対談を通じて見えてきた、地方の食文化が持つ計り知れないポテンシャルについてお伝えします。

1. なぜ世界の富裕層は日本の地方を目指すのか?

まず、客観的な数字を見てみましょう。

2025年度、日本を訪れたインバウンドは過去最高の約4,200万人。

彼らが日本国内で消費した金額は、実に9兆5,000億円にのぼります。GDPでは輸出額として計上されるのですが、トップの自動車(約17兆円)に次ぐ第2位。

観光の波及効果を考慮すれば、自動車産業に並ぶ規模の経済効果を生んでいるのです。

では、その富裕層の方々はどんな旅を求めているのでしょうか。

かつての富裕層旅行といえば、豪華なホテルのスイートルームに泊まり、ゴージャスな食事を楽しむというイメージでした。

しかし今、彼らが最も価値を置いているのは「唯一無二な体験」です。まだ誰も訪れていない場所にいち早く足を運び、その土地ならではの食や文化を自分だけが体験する、そんな冒険的な旅のスタイルにシフトしているのです。

その結果、東京や京都の有名レストランではなく、日本各地の地方に世界中の目が向けられ始めています。

その土地の地理や歴史、文化と深く結びついた食文化を丸ごと楽しむという考え方が、いま世界的な潮流となっているのです。

2. 車でしか行けない場所に年間8,000人が集まる理由

具体的な事例をご紹介しましょう。

富山県南砺市の旧利賀村。人口わずか400人。冬は豪雪に閉ざされ、車でしかアクセスできず、観光資源と呼べるものが何もないこの場所に、オーベルジ:L’evo(レボ)があります。

ここに、年間約8,000人ものお客様が訪れているのです。そのうちインバウンドは約1,000人。毎日確実に5人の外国人旅行者が、この小さな村を目指してやって来る計算になります。

なぜ、そんな場所に人が集まるのか。シェフの谷口さんが使う食材は、地元の富山産がほとんど。朝獲れの食材がその日の夜に使え、「誰が、どんなやり方で、自分の店まで届けてくれたか」がすべてわかる。東京では決して実現できない、顔の見える食材との対話がそこにはあります。

さらに注目すべきは、レボがもたらす地域全体への経済波及効果です。レボの料理に感動した海外の富裕層が、シェフを通じて地元の生産者を紹介してもらい、そこからビジネスが生まれる。

実際に、ある生産者のお米がアメリカ西海岸の寿司店で使われるようになり、レボと取引を始めてから売上が5倍、10倍に伸びた生産者もいるといいます。

同様に、北海道十勝のオーベルジュ:エレゾエスプリも見逃せません。オーナーの佐々木さんは十勝出身。子供の頃から当たり前のようにジビエを食べて育った方です。

「人間と一緒に暮らしている命をいただくのだから、全部を食べることで成仏させたい」という哲学のもと、コンソメから始まり、シャルキュトリ(加工肉)、そして最後にステーキやローストという流れで、一頭の命を余すことなく味わう料理を提供しています。

こうした唯一無二のストーリーと体験こそが、世界中のフーディ(食の愛好家)を惹きつけているのです。

3. 美味しさの先にある物語

こうした地方のシェフたちに共通するのは、東京や海外の一流レストランで技術を磨いた後、あえて故郷や地方に戻るという選択をしていることです。

「自分が18歳まで育った退屈な田舎の食材の方が、東京よりもずっと美味しかった」と、多くのシェフが語ります。

10年かけて一流の技術を身につけた上で、その技術を地方の食材に注ぎ込む。これは、まさに地域の価値を再発見する行為ではないでしょうか。

一方で、印象的だったのは、日本のシェフが抱える価格設定のジレンマです。海外のレストランでは、料理をアート(芸術)と捉え、シェフのブランドや世界観そのものに価格をつけることが一般的です。

しかし、日本のシェフの多くは、食材の原価に自分の技術料を少し上乗せするだけ。自分を育ててくれた地元の人たちが食べられない値段にはしたくないという真面目さと誠実さが、逆に適正な対価を得ることを難しくしているのです。

4.足元の「食」にこそ、地域の未来がある

人口400人の村に年間8,000人を集めるレストラン。命の哲学を料理で体現するオーベルジュ。

これらの成功事例が示しているのは、「食」には地方を根本から豊かにする力があるという事実です。

私たちの大分にも、豊かな海の幸、山の幸、そして温泉文化があります。

世界の富裕層が「まだ誰も知らない日本のローカル」を求めている今こそ、私たちが足元にある食文化の価値を見つめ直し、磨き上げていくべき時ではないでしょうか。

生産者、料理人、行政、そして市民の皆様が対話と協調を重ねながら、この大分から新たな価値を発信していく。その一助になれれば嬉しい限りです。

出典元動画:【9割知らない】食変わる!?億サマ達の食・ガストロノミーとは?【対談&ゲスト&ReHacQ】

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